日本の総人口は、2019年10月時点で1億2616万7千人と発表されています。この中で、65歳以上は28.4%、さらにその中で75歳以上は14.7%と、過去最高を更新し続けています。現在高齢者の定義は65歳以上ですが、この基準もそろそろ見直す時かと思われます。
日本人の平均寿命は、平成30年のデータで、男性81.09歳・女性87.26歳とこれも過去最高を更新し続けています。ただし、注意しなければならないのが、健康寿命はここからマイナス8歳ぐらいということです。
次に認知症を発症する人の割合ですが、平成24年のデータで、高齢者(65歳以上)の15%となっています。厚生労働省の発表によると、令和7年には19%になると予想されています。19%というと、ほぼ5人に1人が発症するという計算です。高齢化社会が進行し、認知症患者も増え、高齢者が高齢者を介護する老老介護がますます増えてきます。
そんな中で、認知症になってしまったときに困るのが、重要な法律行為は何もできなくなるということです。銀行預金も本人や家族では引き出せなくなってしまいますし、老人ホームや介護施設の入所費用に充てるために自宅を売却しようとしても、本人にも家族にもできません。通常は成年後見人を立てて、売却手続きを進めてもらうのですが、成年後見人であっても、何か重要なことをするには、家庭裁判所の許可を取らなければなりません。これは、とにかくハードルが高く、成年後見人や家庭裁判所の基本的なスタンスは、現状維持の保全です。将来認知症が改善して、家に帰れるようになることはないのか、家を売る事情は、本当に認知症の人のためなのか、家族の事情ではないのか等、とても慎重に判断します。成年後見制度には、様々なメリット・デメリットがあります。それはまた、別の項でご説明させて頂きます。
このような背景から、成年後見以外の手法で認知症対策のできる家族信託の制度が注目されています。