家族信託というと、言葉は知っていても、何やら難しい仕組みを使った相続対策という風に思っている方が多いかもしれません。法律的に押さえておかなければならないポイントはありますが、仕組みとしては決して難しいものではありません。
分かりやすく、お年玉で例えてみましょう。
例 お年玉
皆さんが子供の頃、毎年お正月にもらうお年玉は、とても楽しみだったのではないでしょうか。しかし親の立場からすると、子供が大金を持ってしまうと、どう使うのか、無駄遣いをしないかと心配になるでしょう。
小さい頃はほとんどの家庭で、お年玉は親が預かっていたのではないでしょうか。預かったお年玉の中から子供が欲しいというゲームを買ったり、将来の教育費のために貯金をしたりしていたと思います。中には預かったまま、生活費に使ってしまったという家庭もあるかと思いますが・・・
ここで、気が付くのは、このお年玉のお金のやり取りや人間関係は、家族信託と全く同じということです。
つまり、意思能力のない子供(委託者)のお年玉(信託財産)を、親(受託者)が預かり、子供(受益者)のために使うということです。
認知症になってしまった親(委託者)の財産(信託財産)を、子ども(受託者)が預かり、親(受益者)のために使うというのと全く同じです。最初にきちんとした契約書があるかどうかの差はありますが。
子供はお年玉を親に預けるときに、ちゃんと返してくれるのか心配になると思いますが、「半年後に発売されるゲームを買う」というように、使用目的をはっきりさせておけば安心です。これが信託の目的です。信託の目的を明確にすることにより、親が使い込んでしまったというようなことが防げます。
先の認知症の親の場合だと、預かった財産は「老人ホームの入所費用に充てる」「日常生活に必要な費用を支出する」等が信託の目的になります。
このように家族信託は、同じようなことを日常生活の中で、皆さん経験しているのです。それを法律の裏付けの下で、契約書という形にしたものが家族信託です。