家族信託の注意点

これまで家族信託を見てきましたが、家族信託のメリットとしては、資産の凍結防止、相続の円滑化、二次三次先までの相続の指定、節税効果等様々なものがあります。しかし比較的新しい制度ということもあり、裁判事例が十分に積みあがっていないというリスクがあります。他にどういう注意点があるのかを見ていきましょう。

長期にわたり関係者を拘束する

家族信託は一次相続だけでなく、その先まで設定できます。このことはメリットである反面、長期間にわたって当事者を拘束し、かえって不測の事態を招くことにもなりかねません。20年30年と先を見据えた家族信託の設計には、より慎重な検討が必要になります。

損益通算ができなくなる

これは一般の方というよりは、不動産賃貸で収入を得ているマンション経営者の方が、賃貸物件を信託財産に設定したときに、通常ならば赤字の翌年への繰り越し等ができるところを、繰り越しできなくなる等のデメリットがあります。これは明確なデメリットです。

税務申告の手間が増える

信託財産から年間3万円以上の収入がある場合は、信託計算書・信託計算書合計表を税務署に提出しなければなりません。また、毎年の確定申告の際、信託財産から不動産所得のある場合は、不動産所得用の明細書の他に、信託財産に関する明細書も添付する必要があります。

家族信託ではできないこと

家族信託でできないことの代表は成年後見制度の「身上監護」です。成年後見制度の財産管理の部分では、より柔軟な対応ができるのですが、信託では身上監護はできません。身上監護とは、生活環境の整備や、本人に代わり、病院や施設の入所の手続きをすることです。ただし家族信託の場合、ほとんどのケースで委託者が親、受託者が子どもになることが多いので、子や家族という立場でそういったことはできるケースがほとんどだと思われます。