信託における所有権

不動産

土地建物に信託が設定された場合、その土地建物の所有者は受託者となります。登記もしなければなりませんが、通常の所有権移転と異なり、信託により所有権が移転した場合は、登記簿に信託財産であることが明記されます。第三者にもその土地建物が信託財産であることが分かるようになっています。

動産

動産の場合も、所有権は受託者になります。銀行預金は、信託口口座という口座を作り、その口座で管理していけば、その預貯金が信託財産であることが第三者にも分かります。しかし信託口口座が作れる銀行は非常に少ないのが現状です。分別管理がきちんとされていれば、受託者の個人名義での口座でもいいのですが、受託者の財産が差し押さえられたとき、一緒に差し押さえられてしまうリスクがあります。信託口口座であれば、そのようなことはありません。

信託における税金

信託では、所有権は上記の通り受託者へ移るのですが、税制上は、基本的に受益者が財産を所有しているものとして課税されます。

信託の設定時

家族信託の場合、ほとんどのケースは委託者=受益者となります。税制上は、委託者から受益者が信託財産を取得したとみなされますが、委託者=受益者の場合、事実上所有者が変わらないことになるので、信託の設定に伴う贈与税等の課税はありません。ただし不動産の場合、信託の登記で、土地建物は固定資産税評価額の0.4%相当額がかかります。不動産取得税等はかかりません。ただし、委託者=受益者とならない場合は、税制上、受益者が信託財産を委託者から取得したとみなされますので、個人間で正当な対価が支払われないのであれば、受益者に贈与税が課税されます。(名目上の所有者は受託者であったとしてもです)

信託の期間中

受託者が信託財産を第三者に売却した場合は、所有権は受託者から第三者に移りますが、税制上は、受益者が第三者に譲渡したものとみなされますので、受益者が譲渡所得税の対象とされます。例えば、委託者=受益者を老人ホームに入所させるために、受託者が信託財産の不動産を売却した場合は、受益者に課税されるということです。また、受益者が死亡した場合、信託に特に定めがなければ、受益権は相続の対象になります。ほとんどのケースでは、信託契約の中で受益者が死亡した場合、次の受益者をどうするかの指定をします。いずれの場合でも受益権を受け継いだ人は、死亡した受益者から信託財産を受け継いだとされ、相続税が課税されます。

信託の終了時

信託終了時の受益者と、終了時の残余財産の取得者が同じ場合は、実質的な財産の移転はなかったと考えるので、課税はされません。終了時の残余財産の受取人に受益者以外の者がなっていれば、残余財産の取得者に贈与税が課税されます。受益者死亡に伴う信託終了では、残余財産の受取人に相続税が課税されます。

受託者への課税

受託者は、動産でも不動産でも所有者となりますが、税制上は受益者が所有しているものとみなされますので、なんら課税されることはありません。

不動産取得税

信託財産が不動産である場合、信託終了時に不動産取得税が課税されますが、委託者=受益者であれば、課税されません。信託契約時に、不動産の所有権は、委託者から受託者へ移りますが、このときも不動産取得税は課税されません。