家族信託は様々な効果を持たせることができます。どのような効果が期待できるか見ていきましょう。
凍結防止効果
認知症対策や相続時の財産凍結を防止する効果です。例えば、不動産を所有している人が認知症を発症してしまうと、本人に意思能力がないとして、その不動産は売却できなくなります。家族が介護費用に充てるため、売却しようとしても、本人ではないので売却できません。そこで成年後見人をつけて、この不動産を売却しようとなりますが、後見人は本人の財産保全が任務になりますので、売却に応じなかったり、家庭裁判所の許可が下りなかったりで売却できない等の事態がよくあります。さらに、認知症の方の銀行口座も凍結されます。このようなとき、認知症の発症前に家族信託を使えば、不動産や預貯金の処分権限をあらかじめ受託者(息子等)に移行させるので、受託者(息子等)の権限で不動産の売却をすることができます。信託された預貯金も凍結されることはありません。相続時にも、相続でもめている間、銀行口座が凍結されていても、信託された分の貯金は受託人の権限で引き出し可能です。この効果は、遺言や成年後見制度ではできないメリットです。
≪例≫
Aさんは太宰府市在住の74歳、妻に先立たれ、長男Bが近くに住んでいる。Aさんの財産は自宅不動産(1,500万円)と貯金200万円。先の事を考えて、もしものときに入所する老人ホームを見つけておいた。貯金だけでは入所費用に不足するため、もしものときは自宅を売却しようと考えている。しかし認知症を発症してしまうと、意思能力がないとして不動産の売却はできなくなってしまう。そこで家族信託を利用して、認知症を発症しても長男Bが売却できるようにしようと考えた。
委託者(Aさん) 受託者(長男B) 受益人(Aさん)
信託財産(Aさんの自宅土地建物・貯金の一部)
信託目的(Aさんが認知症を発症したら自宅土地建物を売却して、老人ホームの入所費用に充てる)
さらに、父が亡くなった後、残った財産をどうするかということもこの家族信託の中で決めておくことができます。