相続をするとき、プラスの財産よりマイナスの財産(借金)が明らかに多ければ、普通に相続をしたのでは損をしてしまいます。また、実家の山林を相続したとき、売却しようと思っても買い手がつかないような場合、固定資産税や維持管理費だけ払い続けなければならないことになります。このような場合は、相続放棄を検討するといいでしょう。相続放棄は、他の相続人に「遺産はいらないよ」と言うだけでは法的な効力はなく、家庭裁判所に申述するという手続きが必要になります。
相続放棄は1回拒否されると再申請ができないため、申請書類・添付書類には細心の注意を払う必要があります。
それでは相続放棄の手続きについて見ていきましょう。

相続放棄とは

相続放棄とは、相続人の地位を確定的に放棄するもので、初めから相続人でなかったのと土曜の効果になります。

相続放棄手続きの流れ

1. 家庭裁判所へ申述書の提出
添付書類
・相続放棄申述書
・亡くなった方の戸籍謄本(出生から死亡まで)
・亡くなった方の住民票
・相続放棄する人の戸籍謄本
・収入印紙800円
・郵便切手

2. 申述の照会書作成・提出
家庭裁判所へ申述書を提出すると、内容についての質問が来ます。なぜ放棄をするのかといった質問に回答することになります。

3. 家庭裁判所に受理される

4. 債権者への通知
相続放棄が受理されたとしても、裁判所が各債権者へ連絡してくれる訳ではありません。放棄をした人が、各債権者へ相続放棄が受理されたことを通知します。

5. 他の相続人への通知
相続の放棄をした場合、放棄された財産の相続権は次の順位の人へ移ります。この次の人への連絡を怠ると、次の人が借金を背負ってしまうことにもなりかねません。必ず次の人へ連絡をしましょう。これは次の人、その次の人と、相続権のある人がいなくなるまで続きます。

相続放棄の注意点

続放棄ができるのは、3カ月以内

これを熟慮期間と言いますが、「単純承認」「限定承認」「放棄」を決めるのは、自分に相続があったことを知ったときから3カ月以内となります。ここでポイントになるのが、「亡くなったときから3カ月」ではなく、「自分に相続があることを知ったときから3カ月」という点です。自分の父が亡くなって、死亡に立ち会っているような場合は、亡くなったときからスタートしますが、面識のない親戚が亡くなったことを知らず、相続人が亡くなっていたり放棄したりで相続が回ってきた場合、その通知が来た時から3カ月の熟慮期間がスタートします。なので、この場合は亡くなってから3カ月が過ぎてしまっているので、放棄できないということはありません。

相続放棄の申述は、基本的には1回限り

申述書に虚偽の内容が書いてあったり、添付書類が間違っていたいたり、照会書の質問の答えがいい加減だと、却下されることがあります。却下されると高等裁判所へ即時抗告という手段がありますが、相続放棄の手続きは様々な判例があり、認められる可能性はかなり低いです。1回限りの慎重な手続きが求められます。

相続人が相続財産の一部でも使ってしまった場合は、放棄が認められなくなる

例えば、被相続人の預貯金を解約したり払い戻しをしたりした場合や、不動産の名義変更、携帯電話の名義変更や解約でも相続財産の処分とみなされることがあります。このような場合は、単純承認をしたとみなされ、相続放棄ができなくなります。相続放棄をする際は、遺産には何も触れないことが大切になります。

遺産分割協議の場での相続放棄

遺産分割協議の場での相続放棄は、遺産分割協議書内で、「取り分をゼロにする」と宣言しただけであり、法的な効果はありません。債権者から法定相続分の債務の請求が来れば、払わなくてはなりません。

まとめ

以上の事から、相続放棄は思ったほど簡単な手続きではないとご理解頂けたかと思います。放棄したかったのに、結果できなかったということが無いよう、行政書士等の専門家に任せれば安心です。